『リエゾン-子どものこころ診療所-』を観て【うつと子育てとヤングケアラー】

うつのお悩みに関するブログ

ドラマ『リエゾン-子どものこころ診療所-』の最終回を先日観終えました。さまざまな発達障害を抱える子どもたちとお母さん・お父さん、そして彼らに寄り添う児童精神科医や臨床心理士をはじめとする医療・福祉の専門家たち。毎回はじめて知ることも多く、自分が今の仕事をしていながらいかに何も知らなかったかに気づかされ、とても勉強になるドラマでした。

とりわけ印象に残ったのは、第二話のADHDを抱える小学4年生の女の子とうつ病(のちに双極Ⅱ型障害と診断)で休職中のお父さんという父子家庭のストーリーでした。(※以下、あらすじを克明に引用しています)

鬱が重くて家事や片付けもままならずゴミだらけの部屋の中で、一日中布団に寝たきりのお父さんの世話で学校にも通えない毎日の中、女の子は万引き騒ぎを起こしてしまいます。ついに児童相談所が女の子をお父さんと引き離すべく動き出しますが、父親は我が子と引き離される事に激しく抵抗します。せめぎあう大人たちの中で肝心な子どものこころが置き去りにされていると感じた研修医は、女の子とふたりきりで向き合います。

クリニックを訪れる子どもたちと同じように発達障害を抱え、繊細な感受性をもつこの(松本穂香さん演じる)研修医の女性が引き出したのは、思いもよらない子どもの本当の気持ちでした。

「学校行きたい…学校行きたい…学校行きたい…。」

「でも…学校行くと…お父さんが死んじゃうから…。毎日…死にたい死にたいって言うから…。もう誰も死ぬのは嫌だから…(女の子のお母さんも心を病み、既に自死していました)。」

「でも…もうお父さんと一緒にいたくない…。」

私自身、双極性障害当事者(※寛解ADHD(注意欠陥・多動性障害)の可能性ありと診断変更、定期的に通院継続中)であり小学生の子の母親でもあります。そんな私にとって(このドラマのように)「あなたがこの子にこれまでしてきた事は虐待です」と第三者から静かに突きつけられる瞬間は、想像するだけで胃がきりきり痛みだすような苦痛でした。しかしそれ以上に、他でもない我が子からこの病が原因で「もうお母さんと一緒にいたくない」と告げられるとしたら。胸がはりさけそうになる程、死にたくなる程つらくなると思います。

しかしここで一番大切なのは、私たち大人の気持ちではありません。子どもにとって何が一番つらいことなのか。何が一番望むことなのか。そして子どもにとって一番幸せな選択とは何なのか。これまでひたすら親の犠牲として生きる道しかなかったこの子を、今こそ幸せな道へと導く最善の道とは。

このお父さんは最後には気づき、慟哭とともに「娘をよろしくお願いします」と、己のあやまちと無力を受け入れていきます。

もしも、今これを読んでいるあなたが、うつ病や双極性障害その他の精神疾患を持つ親に振り回されている当事者(ヤングケアラー)であるならば。

あなたにとって、自分がお父さんあるいはお母さんから“振り回されている”という事実や“今わたしは苦しんでいる”という感情は、受け入れられないかもしれません。

どうか、堂々と逃げてほしい。助けを求めてほしい。「もう嫌だ」と、嫌だと思うあなた自身を、堂々と抱きしめてあげてほしい。あなたは何も悪くない。

一度しかないあなたの人生は、他の誰のものでもない、あなたのものだから。

引用元|『リエゾン-子どものこころ診療所-』(原作:ヨンチャン、竹村優作(モーニング(講談社)にて漫画連載中、テレビ放映は2023.1.20~3.10テレビ朝日系)

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