【置かれた場所で咲きなさい】この言葉が嫌いだった理由。

うつのお悩みに関するブログ

婚約破談の後、実家暮らしで両親とケンカばかりだった15年前の私

こんにちは。福岡県北九州市のうつ不登校相談・カウンセリングルームSmileAgain(スマイルアゲイン)です。

今回ご紹介するのは、渡辺和子さん(修道女にしてノートルダム清心学園理事長。2016年没)の書かれた「置かれた場所で咲きなさい(幻冬舎:2012年発行)」。

「心が洗われた」

「勇気がもらえた」

「自分を見つめ直すきっかけになった」という肯定的な感想の多い名著ですが、

意外にもサジェストとして「嫌い」という言葉が出てきます。

『神は力に余る試練を与えない』

『この子は私だったら育てられると思って、神がお預けになったのだ』

・・・一児の母となり、娘も元気に育っている今になって読み返すと、慈雨のように心に沁みわたってくる言葉の数々ですが、10年余り前の私(婚約破談の末に妊娠中絶し、その後良縁にもなかなか恵まれず、実家暮らしで両親といさかいが絶えず、荒んだ心で日々を過ごしていた)だったら、この本をそっと差し出されたところで、とても読む気力はわかなかったでしょう。(いや、そのまま古書店に売り飛ばしていたかもしれません。)

そう、どんなに頑張ったって、私は所詮あんた(母親)のような女にしかなれないんだよ。

他の女たちは、かるい荷物で楽しそうに歩いているのに、こんな重くて汚くて嫌な荷物を、何故よりによって私に持たせようとするの?

私はただひとこと、「つらかったね。よくがんばったね。もういいんだよ。」と言ってもらいたいだけなのに。

そしてひたすらゆっくり眠れるあたたかい居場所。ただそれだけを望んでいるのに。

パワハラ地獄でも「ひとすじの希望を見出しなさい」と、言えますか?

あらためて、この言葉が「嫌い」だという数々の思いを読み進めてみると、

「戦災・虐待・貧困等で人間としての尊厳さえ奪われ、もはやそこから這い上がる気力さえない人々をさらに絶望させる言葉」

「ブラック企業でパワハラにあっていようが、今の環境で耐えなさいという事ですか?」といった言葉が目にとまりました。

コロナ禍が収束してもなお、本当に苦しい状況に置かれ、生きる事に絶望している人は、老若男女問わず、今この日本にもあふれています。

リストラやモラハラ・パワハラに苦しみ、働ける居場所や住む家さえ追われてしまった。

家庭の貧困のために学校に通えず、未来に何の希望も描けない。

実の親から虐待されている子ども。おなかをすかせて動けないでいる子ども。

そして、今まさに死のうとしている人たち。

「置かれた場所で咲きなさい」…「まずは今置かれた環境から這い上がるべく頑張りなさい」という励ましの言葉は、時に残酷な刃となり得るのかもしれません。

映画「ある人質 生還までの398日」

映画「ある人質 生還までの398日」(シリアで過激派組織IS(イスラム国)の人質となり奇跡的に生還を果たしたデンマーク人の写真家ダニエル・リューの実話を元に映画化。アナス・W・ベアテルセン監督)の事を思い出したのは、そんなやりきれない日々の中でした。

(↓以下、これから映画を見る予定で内容を知りたくない方は、飛ばしてください)

戦場カメラマンとしてシリアを訪れたダニエルは、過激派組織「イスラム国」の兵士に拉致・監禁され、母国の家族には巨額の身代金が要求されます。連日の凄惨な拷問と飢えに苦しむ中で自殺さえ図るものの未遂に終わります。

(自殺を引き止めたのはイスラム国の兵士だったのですが、止めた理由が「死なれると身代金が取れなくなるから」だったと知り、震撼しました。)

絶望の日々の中、新たに人質として加わったジェームズ。彼は、わずかな段ボールの切れ端でチェスを作ったり、どんな時もユーモアと希望を忘れない人でした。

そしてダニエルは家族の必死の奔走の末、身代金が支払われ、釈放されます。

ダニエルとの別れに際してジェームズは、愛する家族への伝言を託したうえで、こう告げます。

「君は、ここの事は忘れて日常に戻れ。僕は・・・ここでの日々を、もうしばらく楽しむよ」

「ヤツらの憎悪に負けたくない。僕の心にあるのは、愛だけだ。」

私はもちろんあなたも、おそらく世界中のほとんどの人が、ジェームズのようには行動できないと思います。「どんな辛い状況であろうとも、今置かれている場所でひとすじの希望を見出すことで、道は開ける」そんな事を言う資格は私にはありません。

だけど、「0.001%の希望」でも、針の穴を通すほどのわずかな光でも見えてくるのなら、その光をしっかり信じて、やっぱり生きていきたい。

うつと不安で人生楽しめない時は

婚約破談の末に両親とのいさかいが絶えず、すさんだ心で過ごしていた10年前の私は、「こんな楽しくない人生、生きていたって意味がない」と思っていました。

でも、「人生、楽しまなくちゃ」なんて、誰が決めたの?

人に会うのが怖い日は、無理して会わなくていい。

起き上がれない時は、一日ただ横たわっていればいい。

何もしたくない日がもう何日も何週間も何ヶ月も何年も続いている。

もう、生きてたってしょうがないとさえ、思えてきた。

そんな時にはもう、人生、明け渡しましょう。人智の及ばない何かに。

だいじょうぶ。神様は、今のあなたには想像もつかない奇跡を、プログラムしてくれているから。

引用元|

「ISの人質 13カ月の拘束、そして生還」(プク・ダムスゴー著:光文社新書刊)

映画「ある人質 生還までの398日」(公式サイトhttps://398-movie.jp/)

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